自然豊かな園庭をつくるためには、植物を植えるだけでなく、日々の手入れを通して植物を育てていくことも大切です。では、園庭の植物を元気に育てるためには、どのように水やりをすればよいのでしょうか?
今回は、私たちが園庭づくりを学ばせていただいている出原大先生が立ち上げた愛知県の「むぎの穂保育園」を訪ね、普段の水やりで大切にしていることを教えていただきました。

実際に水やりをする様子を見せていただくと、そこにはさまざまな工夫がありました。今回は、出原大先生に教えていただいた、植物を元気に育てるための「水やりの3つのポイント」をご紹介します。

出原 大(いずはら・だい)
むぎの穂保育園 園長。幼児教育における植物環境について研究・実践。これまで聖和大学(現関西学院大学)、松山東雲女子大学教員を歴任し、子どもと植物・自然に関する著書も執筆。
主な著書
『生きる力につながる自然*植物あそび101』
『自然*植物あそび1年中』
ASOBIOとの関わり
ASOBIOでは、むぎの穂保育園を訪問し、園庭環境や子どもたちの遊びについて学ばせていただいています。またASOBIOInstagramでの自然あそびの紹介、公開保育での講演・助言など、さまざまな活動をご一緒しています。
園庭の水やりというと、ホースの先に散水ノズルをつけて、水の勢いや広がりを調整する方法を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
出原先生は、散水ノズルをつけず、ホースをそのまま使って水やりをするそう。さらに、ホースの先を潰して水量を調整するのではなく、親指の腹を使って水の出方を細かく調整していました。

植物の近くでは優しく水を出し、高い場所に水を届けたいときには、細く鋭く水を飛ばす。その場の状況や植物の様子を見ながら、水の勢いを変えているそうです。
むぎの穂保育園では、子どもたちもホースの水量や水の勢いを自分で調整することを、実際に体験しながら身につけていくそう。水やりそのものが、植物の様子を知り、自然と関わる体験にもなっています。
夏の暑さは、植物にとって大きな負担になります。
出原先生が大切にしているのが、水やりをする時間帯。
夏場は、朝の水やりを遅くとも9時まで、そして、夏は朝だけではなく、朝と夕方の1日2回、たっぷりと水を与えるのがポイント。
一方で、日中の暑い時間帯の水やりは避けます。強い日差しのもとで葉に水滴が残ると、葉の状態や日射条件によっては、葉に負担がかかる場合があります。そのため、特に夏場は暑さの厳しい日中を避け、朝の涼しい時間帯と夕方にしっかり水を与えることを意識します。
植物の水やりでは、「いつ水をあげるか」も大切なポイントです。
植物の水やりというと、「根元にたっぷり水を与える」ことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろん、根に水を届けることは大切です。
しかし、出原先生が教えてくれたのは、根元だけではなく、葉にも水をかけること。ポイントは、葉を「濡らす」というより、「洗う」ように水をかけること。
園庭の植物の葉には、日々の風や雨、砂ぼこりなどによって、埃や汚れが付着することがあります。葉の表面を水で洗い流すことで、葉をきれいな状態に保ち、植物が光を受けて光合成を行うための環境を整えることにつながります。
また、葉についた虫や卵などを水で洗い流すことで、害虫が増えるのを抑えるための一つの方法にもなります。実際に出原先生の園では、殺虫剤だけに頼るのではなく、水やりも植物を健やかに保つための方法の一つとして取り入れています。
実際の水やりの様子やコツはASOBIOのInstagram動画でご紹介しています。
出原先生に水やりについて伺っている中で、もう一つ印象的だったのが、植物が水に濡れたときに感じる香りについてです。植物からは、フィトンチッドと呼ばれる揮発性の成分など、さまざまな香り成分が放出されています。森林などで感じる、木々や植物のさわやかな香り。こうした植物の香りは、私たちが自然の中で心地よさを感じる要素の一つともいわれています。
園庭で水やりをすると、葉が濡れ、植物や土の香りがふわっと立ち上がります。
訪れたのは、気温30度を超える暑い夏の日でしたが、水やりをした後のむぎの穂保育園の園庭では、植物や土の香りを感じながら、木陰を通り抜ける風に心地よさを感じました。
むぎの穂保育園の先生方も、「今日の水やり、私がやりたいです!」と、リフレッシュの時間として水やりを率先して行うこともあるそうです。


水やりは、植物を育てるための大切な作業です。同時に、園庭で働く大人にとっても、植物に触れながら季節の変化を感じることのできる、心地よい時間になるのではないでしょうか。
自然豊かな園庭というと、木を植えたり、草花を増やしたり、ビオトープをつくったりすることをイメージするかもしれません。
しかし、園庭はつくって終わりではありません。植物が育ち、花が咲き、葉が茂り、虫がやってくる。季節が変われば、園庭の姿も変わっていきます。
その変化に合わせて、植物の状態を見ながら手を入れていくことが必要です。今回、出原大先生から教えていただいた水やりも、「園庭を育てる」という視点から大切にされている営みの一つなのだと感じました。
1.ホースから出る水の勢いを手で調整する
2.夏は水やりの時間帯を意識
3.根元だけでなく、葉も洗うように水をかける
どれも特別な道具を必要とするものではありませんが、植物の様子をよく見て、その時々の様子によって水を与える。そうした日々の積み重ねが、緑豊かな園庭を育てるには必要不可欠なポイントです。



園庭づくりでは、「どんな木を植えるか」「どんな環境にするか」といった、目に見える環境に目が向きがちです。しかし、自然豊かな園庭を育てていくためには、そこにある植物や生き物と、日々どのように関わっていくかも大切です。
大人が植物の様子をよく見ながら水やりをしていると、その自然へのまなざしは、子どもたちにも少しずつ伝わっていきます。
「今日は葉っぱが乾いているね」「この植物の葉っぱを洗うように水をかけるね」
そんな大人の姿を見たり、子ども自身が水やりを体験したりすることで、植物の変化や虫、土や水など、身近な自然に目を向けるきっかけが生まれます。
実際に、むぎの穂保育園の子どもたちも、先生方が水やりをしている様子や植物に触れる様子を間近で見ることで、植物と日常的に触れ合うきっかけとなることもあるそう。
水やりは、植物を育てるためだけの作業ではなく、子どもと自然をつなぐきっかけにもなるのです。

自然豊かな園庭をつくり、育てていくためには、日々の小さな工夫の積み重ねが大切です。
今回ご紹介した水やりのポイント以外にも、私たちが出原大先生に教えていただいた、自然豊かな園庭づくりのヒントを冊子にまとめています。
自然豊かな園庭づくりについて、さらに詳しく知りたい方や、冊子をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
