ASOBIO園庭セミナーレポート 『目指せ!園庭マスター 第2回 リスクとハザードと保護者対応』

10月18日に開催したASOBIO園庭セミナー『目指せ!園庭マスター 第2回 リスクとハザードと保護者対応』のセミナー動画のアーカイブや登壇者の資料、質問と回答をご紹介します。

セミナーの開催概要はこちらです。

セミナー動画(アーカイブ:58分)

アンケート回答いただいた方に、登壇資料をプレゼントします。アンケート回答はこちらからお願いします。

セミナー中に頂いた質問と回答

Q:スズメバチなど危険な生きものに対してはどうされていますか?(むさしの森保育園さん)
A:こどもが遊ぶ時間に発見した場合には、駆除(殺虫剤を散布)しています。こどもたちが「スズメバチがいるよ」と教えてくれるケースが多いです。こどもには、発見しても追いかけたりせずに、落ち着いて離れれば、刺される事はないよと伝えています。イラガやスズメバチは必ず発生するので、落ち着いて対処する事を心がけています。

Q:高さのある築山等を見守る際の職員の配置はどのようにしていますか?(風と緑の認定こども園さん)
A:築山は見通しを悪くしたり、ケガのリスクがある場所ですが、特別にケガや事故が多いわけではありません。築山に限らずリスクが高い場所には先生を配置していますが、配置するだけでは事故の予防や応急処置ができるわけではありません。こどもの姿をしっかりみて、臨機応変に配置を変える事が大切です。職員の連携が大切なので、日常から園庭のあそびの共有や、ヒヤリハットの共有もするようにしています。

Q:汚れた衣類や靴は、園で洗濯しますか?園でざっくり洗って、本洗いは保護者ですか?(まめの木保育園)
A:園で軽くすすいでビニール袋に入れて返すケースが多いように思います。綺麗に洗濯する園もありますが、これは「汚してしまって保護者さんに申し訳ない」という心理があるようです。汚れる体験も成長の中で必要である事や、あそびの様子をドキュメンテーション等で保護者に伝える事が大切です。衣服を汚したくない考えを持つ保護者には、汚れても良い服装を予め園に持ってきてもらい、こどもに適宜着替えてもらう運用が良いようです。汚れが激しく、そのまま帰す事ができない場合を想定して、古くなった服や靴を保護者から寄付してもらい、着替えとして使う園もあります。

Q:保護者へリスクの事前説明はされていますか?されているのなら、いつ、どんな内容でしょうか?(ふなお幼稚園さん)
A:園庭は園の保育、教育にとって大切な環境です。教育理念や園の特徴と同様に、なぜリスクのある環境を用意しているのか、説明する事は大切です。最近は入園説明会だけでなく、園庭開放や、プレ保育、地域との交流行事、SNS等、沢山の保護者と接触する機会があります。様々な場所、手段を使って、考え方を説明する、理解してもらう事をお勧めします。

Q:木登りの危険周知の方法や環境設定はしていますか?どんどん高く登っていく子どもを見守ることに怖さを感じます…。(あけぼのぽんぽここども園さん)
A:10m以上の高さのある木に木登りできる園もあります。ポイントは先生が絶対に木登りを手伝わない事、踏み台やはしご等の補助する道具を配置しない事(容易に木登りできる環境にしない事)です。自力で登れる子であれば、これ以上登ると自分には危険である事にも気づきます。慣れるまではあまり高くない場所から落下するケースはあるので、木の周りを耕したり、バークチップを撒くことをおすすめします。マットや、ゴムチップを敷くことはお勧めしません。こどもが落下してよい(飛び降りるあそび場)と勘違いするケースがあります。大雨や台風の後は、枝が損傷して破断、落下する可能性があるので、注意して点検をしましょう。

Q:ビールケースに板を乗せたり、タイヤに板を乗せてシーソーにすることすら危険となって職員が環境の中で排除しています。どのように対応したらよいでしょうか?(ほんちょう保育園さん)
A:賛成する先生、反対する先生がいるのだと思います。先生同士で、どんなこどもを育てたいのか議論をする事が大切です。ビールケースを板に乗せるあそびで何が育つのか、その危険を排除する事でこどもに必要な経験は失われないのか、セミナー中で紹介したリスクとハザードの話し合いもしてみるとよいと思います。下の画像はユンボ(シャベル付きの重機)に興味を持ったこどもが、机の上に椅子を乗せてユンボあそびをしています。1人の子のアイデアが周囲のこどもに伝播し、工事あそびに発展しています。言葉による伝え合い、豊かな感性と表現、自立心、協同性、社会生活との関わり、思考力の芽生え・・・育めそうな10の姿が沢山浮かびます。危険だからと一方的に注意をしたり、机や椅子を撤去すれば安全にはなりますが、こどもの育つ機会は失われます。こういったこどもの姿やあそびを職員間で共有し、話し合う事がとても大切です。

Q:環境に慣れたときの方がリスクがたかくなりませんか?(豊中愛光幼稚園さん)
A:自然を取り入れた園庭環境は、季節、天候、経年による変化(成長や劣化)、こどものあそびによって、環境そのものが変化する事が特徴です。可塑性(かそせい)の高い環境にする事によって、こどもが新しいあそびを生み出すきっかけになります。従来の鉄製の遊具や、人工芝を張った築山、平面のグラウンドは、形状が変わらない分油断につながり、事故が発生するリスクは高まります。

Q:ドイツの12の権利について教えていただけますか。(アイン保育園さん)
A:2024年6月のドイツの園庭ツアーで訪問した園の中の、AWOという団体(ドイツ労働福祉団体)が定義しているものです。ドイツ労働福祉団体(AWO)は社会、健康、家族、雇用関連の福祉サービスを提供する全国組織です。
子どもの権利の強化向上を図るために、2015 年に「子どもの権利 12 か条」に関する冊子を発行しました。これは、保育教育施設における子どもと大人の協力に関する基本理念をまとめたもので、子どもたち、保護者の協力を得て、1年ほどかけて完成しました。大人向けと子ども向けの2通りあり、子ども向けでは、大人向けの表現(例えば、1.自己決定の権利、5.教育を受ける権利、8.(意見等の)表現の自由の権利、10余暇と休養の権利、12.法的情報を得る権利等)が、子どもにも分かりやすい平易な言葉で表現されています。

秋のASOBIOセミナー告知

9月~12月でASOBIOセミナーを開催します。自然豊かな園庭やビオトープの作り方、危険や保護者との向き合い方、海外(ドイツ)の事例まで、専門家や玉川大学 大豆生田先生をお招きして解説いただきます。