コラム

こども主体の保育環境を考える ~園庭におけるランドスケープの考え方~

ランドスケープという言葉をご存知でしょうか。今まで幼稚園・保育所は「こどもが通う施設」でしたが、これからは園の存在は「大人からこどもまで、地域の人々が集う施設」になる必要があります。こども主体に加えて、地域の人々も主体と考える共主体の考え方です。その中で注目されているキーワードがランドスケープです。グランドと遊具を配置した従来型の園庭から、自然環境を上手に取り入れて地域の景観に馴染む園庭に改修する園が増えています。弊社のランドスケープデザイナーの比留間が園庭におけるランドスケープに関して解説をします。

こども主体の保育環境を考える 
~園庭におけるランドスケープの考え方~

「ランドスケープ」(Landscape)は、一般的に「景観」や「風景」と訳されますが、その意味はそれだけにとどまりません。ランドスケープは、自然環境の景観に加え、人間の影響を受けた景観や、文化的・歴史的要素も含む広範囲な概念です。単なる視覚的な美しさにとどまらず、地域の環境、社会的な背景、さらには人々の生活や文化にも関わる重要な要素です。

昨今、ランドスケープが注目される背景は、環境問題や都市化が進む中で、自然と調和した空間作りが重要視されています。緑地や自然空間の不足が課題となり、ランドスケープデザインが質の向上に貢献すると認識されています。

1. 自然環境の景観

自然とのつながりを感じさせることは、子どもたちの成長に欠かせません。園庭における自然環境は、以下のように教育的な価値を提供します。

  • 植物とのふれあい:四季折々の植物の変化(花が咲く、実がなる、葉が落ちる)を観察することで、命の大切さや自然のリズムを学びます。これにより、子どもたちは自然環境への感謝の気持ちを育みます。
  • 観察力の向上:昆虫や小動物などの生命の多様性に触れ、細やかな観察力を養います。こうした体験が、科学的な探究心や生命に対する理解を深めます。
  • つながりの実感:自然の中で過ごすことで、自分が自然の一部であるという感覚が生まれ、環境への配慮や持続可能な行動を学ぶ基盤となります。

2. 人間の影響を受けた景観

人工的(遊具等)に自然要素が加わることで、園庭は子どもたちに安心感を与えると同時に創造的な学びの場にもなります。

木製の遊具は自然との調和と経験の味わいが魅力
  • 遊具や砂場の配置:遊具や砂場は、自然と調和するように配置することが大切です。周りに植物を植える、木や石を使って囲むなどの工夫により、子どもたちが自然と一体化して遊べる空間が生まれます。
  • 園庭の調和:遊具やベンチ、歩道といった人工物が自然の中で調和することで、視覚的にも心地よい空間を作り出します。この調和は、子どもたちにとって安全で落ち着ける環境を提供します。
ブランコ等の金属製の遊具も自然と調和するよう華美な塗装や装飾はしていない

3. ランドスケープデザイン

園庭におけるランドスケープデザインは、特に自然の豊かさを取り入れることに重点を置きます。

  • 雑木の庭:雑木の庭デザインを取り入れることで、自然の不規則さや豊かさを感じさせ、子どもたちは五感を使って自然を体験できます。蛇行したラインや懐のある空間は、子どもたちにとって心地よい遊び場となります。
  • 安心感を生む空間:砂場やベンチを囲む懐のある空間デザイン手法は、子どもたちに安心感を与え、集中して遊ぶ環境を提供します。こうした場所で創造的な遊びが促され、集中力が高まります。
  • グリーンインフラ:園庭に雨水利用した貯留槽等を設け、樹木や植物を積極的に取り入れることで、周辺の暑さを和らげたり、環境改善に寄与したりします。自然と触れ合う機会を増やすこともでき、子どもたちにとってSDGsの学びの場となります。

4. 文化的・歴史的要素

地域の文化や歴史を反映させることで、園庭はより深い意味を持つ場所になります。環境調査を通じて、地域に適した植物やデザインを選ぶことが重要です。

環境省が作成している現存植生図
  • 地域の特性を反映:地域ごとの気候、土壌、植生を理解し、その土地に根付いた在来植物や伝統的な要素を取り入れることで、地域の歴史や文化を感じさせる空間が作れます。
  • 背景ストーリーを持たせる:地域の文化や歴史を基にした背景ストーリーを園庭に組み込むことで、子どもたちはその土地に対する理解を深め、地域社会への愛着を育むことができます。

5. まとめ

園庭にランドスケープの考え方を取り入れることで、子どもたちの成長を促進し、創造的な遊び場を提供できます。自然素材や多様な遊び空間は、子どもたちの発達や社会性にも良い影響を与えます。さらに、地域の自生植物、文化等を取り入れた園庭は、子どもたちに地域社会への愛着を深めさせ、より豊かな原風景を形成します。このような園庭づくりは、子どもたちの心を豊かにし、健やかな成長を支える重要な役割を果たします。