秋は、春の豊かな遊びと彩り豊かな環境を整えるための大切な準備期間です。この時期に「緑肥」の考え方に基づいた種まきを行うことで、冬の寒さに耐える植物を育て、春の草花の生育環境を整えることができます。
ここでは、春の園庭を魅力的にするための準備として、種の巻き方と菜の花の育て方をご紹介します。
緑肥とは、生きた植物を育てることで土壌の質を改善する農法です。秋に種をまく作業は、春の園庭活動に不可欠な土台作りとなります。
秋にまく種でおすすめなのは、クローバー(シロツメクサ)やクリムゾンクローバーです。クローバーは植物あそびの定番ですが、土壌を豊かにする重要な役割もあります。
クローバーはマメ科の植物です。マメ科の植物は、根に共生する根粒菌の働きにより、空気中の窒素を土壌中に固定する窒素固定という特別な能力を持っています。これにより、化学肥料に頼ることなく、土壌の栄養分(特に窒素)を自然な形で増やすことができます。クローバーは、この窒素固定の働きを通じて土壌を改良し、次に育つ植物の生育環境を整える「緑肥」として機能します。
種まきにはいくつかポイントがあります。むぎの穂保育園の出原大先生に教えていただいた方法をご紹介ます。種がしっかりと育つよう、土壌に栄養を供給する環境を整えましょう。
今回は、秋撒きなので9月~10月に種蒔きをします。地域によっても異なるので、種のパッケージの裏面を確認しましょう。大切なのは発芽温度です。20度を下回ると発芽が悪くなります。
植栽の周辺を中心に種を撒きます。シロツメクサやクリムゾンクローバー、複数種類の種を撒く場合にはエリアを分けて撒いてください。
いずれも、ホームセンターやインターネットで手軽に入手できます。
1.堆肥を敷く: 種を植えたい場所に、まずバーク堆肥を薄く、約2cmの厚みでざっと広げます。
2. 種を撒く: そのバーク堆肥の上に、種を均一にバーっと撒きます。これは子どもたちと一緒に撒くのもおすすめです。「何かコツがあるか」という疑問も出ますが、種をバラバラバラと(パッと)均一に撒くことが基本となります。種と種の間隔が1cmが目安です。一粒ずつ植えるのではなく、むしろ近くに固まってしまっても、土壌の栄養が豊富であればよく育ちます。
3. 覆土する: 種を撒いた上から、花の培養土を約1cm薄く敷き詰めます。種はバーク堆肥と花の培養土の間に挟まれる形になります。
このように堆肥と培養土を用いることで栄養が豊富になるため、種が少々密集していても(バサッと近くになっていても)、よく育つ環境ができます。覆土する事で、小鳥から種を守る意味もあります。
💧水やりと手入れ
発芽するまで1~2週間、毎日水やりをします。種が流れないようにやさしく水やりするのがポイントです。発芽した後は、2、3日に一度の水やりで大丈夫です。シロツメクサ(クローバー)はマメ科の多年草(※)で、耐寒性が強い植物です。地表に近い「ほふく茎」で広がり、雪や霜にも比較的強いので、積雪がある地域でも冬を越せます。冬の間は地上部が枯れたり休眠状態になりますが、根や茎の基部が生き残り、春に再び生長を始めます。春になると、美しい園庭が仕上がります。
※シロツメクサは多年草ですが、園庭ではこどもが採取したり、歩いたりするので徐々になくなっていきます。毎年同様の作業をする事をおすすめします。
菜の花は、春の庭を鮮やかに彩るだけでなく、子どもたちのさまざまな遊びを広げる環境を作ります。
皆さんがよく思い浮かべる黄色の油菜だけでなく、「アブラナ科の植物=ナッパ(菜っ葉)の花」は全て菜の花に含まれます。具体的には、キャベツ、レタス、カブ、大根、ラディッシュ(二十日大根)などの花も、菜の花です。大根は白い菜の花、カブは黄色など、種類によって色は違ったりしますが、全て菜の花です。
「キャベツの花なんて見たことがない」そんな方もいると思います。それは、キャベツの花が咲く前の状態のものを収穫して食べているからです。すなわち、収穫時期が過ぎて、花が咲き、実をつける状態が菜の花なのです。
むぎの穂保育園の出原大先生に教えていただいた方法をご紹介ます。手順は、クローバー(シロツメクサ)と同じです。種がしっかりと育つよう、土壌に栄養を供給する環境を整えましょう。
今回は、秋撒きなので9月~11月に種蒔きをします。地域によっても異なるので、種のパッケージの裏面を確認しましょう。大切なのは発芽温度です。15度を下回ると発芽が悪くなります。
シロツメクサやクリムゾンクローバーは緑肥として、植栽の周辺を中心に種を撒きましたが、アブラナ科の植物は根を深く張ります。よって、畑や土壌がやわらかいスペースに種を撒きましょう。種類によって、菜の花の形や色が違うので、複数種類の種を撒くことをおすすめします。
いずれも、ホームセンターやインターネットで手軽に入手できます。
シロツメクサ・クローバーと同じです。ただし、種と種の間隔は2~3cmが目安です。クローバーより、間隔を広げる事で、間引きをする必要がありません。菜の花を楽しむ事が目的なので、種のパッケージの裏面の種の間隔より、狭く撒きます。
💧水やりと手入れ
発芽するまで1~2週間、毎日水やりをします。種が流れないようにやさしく水やりするのがポイントです。発芽した後は、2、3日に一度の水やりで大丈夫です。花を楽しむので、間引きの必要はありません。種を撒いて2、3カ月後に収穫期を迎えます。収穫期を過ぎても抜かずに放置してください。冬を越えると気温が上がる春(3〜5月頃)に花茎が伸びて開花します。種を採りたい場合は、そのまま結実まで待ちます(6〜7月頃)。種は、菜種油になるので、すりつぶしてぬるぬる触感あそびを楽しむ事ができます。
菜の花は部屋に飾ったり、色水あそびをしたり、実をすりつぶしてあそぶ事もできます。春らしい美しい景観とあそびが広がる重宝な植物です。毎年、秋に種蒔きをして、春の園庭を楽しみましょう。