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セミナーレポート 「目指せ!園庭マスター第1回:「雨庭のある園庭」~こども・自然・地域をつなぐネイチャーポジティブな未来を考える~」

11月26日に開催したASOBIO園庭セミナー「目指せ!園庭マスター第1回:「雨庭のある園庭」~こども・自然・地域をつなぐネイチャーポジティブな未来を考える~」のセミナー動画の見逃し配信(アーカイブ)や、質問と回答をご紹介します。

セミナーの開催概要はこちらです。

セミナー動画(アーカイブ:90分)

アンケート回答いただいた方に、登壇者資料をプレゼントします。アンケート回答はこちらからお願いします。

セミナー中にいただいた質問と回答

Q:雨庭を造る際に「子供がおぼれたらどうする?」とリスクについて意見が上がったとのことでしたが、どう言った方法でクリアしたのでしょうか?。(hiroko yamasakiさん)
A:福岡先生が施工した雨庭は公共の施設内でしたので、関係者で議論し解決をしました。園で作る場合には、リスクとハザードを園内で話し合う事が大切です。また、園で決めた事(リスクを取り入れる理由)を保護者や地域の方に共有する事も大切です。

Q:駆除の前に命があることを大人が理解するとても共感しました。しかし、残念ながらうちの園庭には今年度毛虫から始まり蜂も集まってきてしまいました。今年度は駆除したのですが、その他にどのような対応が考えられますか?お知恵をお借りしたいです。(shoko shigiharaさん)
A:ハザードと先生が認識した場合には、駆除もやむを得ないと思います。先生(大人)が葛藤して、駆除する姿と、無意識に駆除する姿には大きな違いがあると思います。また、こういった葛藤や判断をこどもに共有する事も大切な事だと思います。こういう課題からネイチャーポジティブな教育はスタートするのだと思います。園庭にお墓を作り弔う園もあります。
一方で環境整備で毛虫や蜂を対策できるケースもあります。適切に剪定や水やりをして、風通しの良い環境を作る事です。藪のような、うっそうと草木が茂る環境に比べて、害虫の発生は少なくなります。

Q:長年放置されていた雨水タンクを今年度から使い始めたのですが、雨水の匂いが気になることと、雨水を池にいれると生き物にとってよくない(アルカリ性の水だから?)と聞き、あまり活用できていない現状です。池の水や色水遊び等に活用したいのですが…参考になる活用法があれば教えていただきたいです。(新田さん)
A:雨水タンクの内部は清潔な状態でしょうか。また溜めた雨水を長期間放置してないでしょうか。雨水は水道水と違い、塩素が入っていないので菌が繁殖しやすい環境になります。雨水を溜めたとしても、1週間位で使い切るか水が入れ替わる事が理想です。雨水は飲用はしないようにしましょう。

Q:園庭が全体的に傾斜しており、表土が大雨のたびに持っていかれてしまう状況です。困ってはいるのですが、それを特徴と捉え、楽しい園庭に繋げていきたいと考えています。大きな工事などは先立つものもあってまだまだ先になるかと思いますが、今、自分たちでできることがあるとしたら、どういうことがあるのでしょうか。素人的には溝をほったら川になり、穴を掘れば池になるか?とも思いますが、取り返しがつかないことになる気もしています。(匿名さん)
A:現地を拝見しないと正確な回答はできません。植栽をする事で、土の流出を抑制する事ができます。傾斜地を緑化した事例をご紹介します。使われていなかった傾斜地が素敵な遊び場になった事例です。

山梨県:バンビユニバーサルこども園

施工前の荒れ地の状態
土壌改良を行い、芝を張りました
養生期間を経て、あそび場になりました

Q:水場に対するリスクや、害虫に対するリスクを行政や保護者に分かりやすく伝えていく為にはどのような工夫が必要となるのでしょうか?(松葉 保育園さん)
A:1問目の質問を参照してください。

Q:雨庭づくり、雨水を利用したビオトープ作りなどの写真を拝見すると石を使って枠や水の流れを作っているように感じたのですが、石を使ったほうがいいですか?(匿名さん)
A:ご質問の通り、水の流れを作るために石や砂利を敷設するケースが多いです。石がなくても、雨水を涵養させる仕組みがあれば、問題はありません。

Q:古いタイルのプール(かなり大きい)を田んぼにしたいのですが、タイルを壊さないで田んぼにする場合、ブルーシートを底に敷いて土を入れる方法で田んぼができますか?(匿名さん)
A:この質問には、経験と知識がないので正確な回答ができません。田んぼは稲の収穫前に水を抜く作業をします。田んぼの泥を排水する事もできないので、難しいかもしれません。

Q:危険生物、害虫、猫のフン、熊…すべて人間目線の被害だと思います。自然社会と共存する大切さを子どもへ伝えたいのですが、自分の中で矛盾が生じています。どのように伝えるとよいでしょうか。(Masakuni Hachiyaさん)
A:この矛盾をこどもと共有してはどうでしょうか。こういった矛盾や葛藤に対して大人とこどもと一緒に向き合う事が、持続可能な社会を作るための、ネイチャーポジティブな教育の始まりだと思います。

Q:雨庭の取り組み素晴らしいと思いました。地球規模の課題だと思います。園庭は広いスペースなので取り組んでみたいと思うのです整備するにあたっての助成金はありますか?(匿名さん)
A:グリーンインフラや雨水流出抑制のための助成金を用意する自治体は増えています(東京都の助成金)。園庭のような大規模な取り組みを対象とした助成金は当社では確認できていません。

Q:雨水でビオトープを作ることは生物にとって大丈夫ですか?(匿名さん)
A:雨庭は雨水を一時的に貯留する空間を指します。よって、雨庭に溜まった水は24時間~数日で土壌に浸透します。よって、雨がしばらく降らないと、乾燥した空間になります。よって、雨庭を水のビオトープ単体で実現する事はできません。雨庭とビオトープ池を接続させる事例を紹介します。

千葉県:thanka幼稚園のだほくぶ

雨樋の雨は水のビオトープに流れ込みます。オーバーフローした水が雨庭空間に流れこむ仕組みです。雨が降らない期間に水のビオトープの水量が減る事を想定し、雨水タンクにも雨水を溜めて、水を補充できるように工夫しています。

Q:東京農業大学の近隣にある保育園です。うちの園でビオトープを行ったり、虫を呼ぶ環境作りを行っています。雨庭にも興味がありますが、園庭が坂になっているので溜めるのが難しいのですが、そんな場所でも雨庭は作れそうでしょうか?(匿名さん)
A:坂でも雨庭は作れます。雨庭は雨水を地中で貯留、涵養させる空間なので、水溜まりができる必要はありません。坂に植栽をして、雨水の涵養性を上げれば雨庭にできると思います。またビオトープがあるのであれば、ビオトープの周囲に植栽をしてオーバーフローした水を浸透させれば、そこは雨庭になります。

Q:実際に雨庭を作る時、施工会社だけではなく、さまざまな専門性のある方々・業者と保育園(保育士)が繋がることが、その後の子どもの学びの広がりや深まりに必要不可欠と考えますが、例えばどういった方々と繋がることができる可能性がありますか?もしくはどういった方々と繋がる必要がありますか?(匿名さん)
A:当社にご相談いただければ、ご紹介も可能です。

Q:先日、園庭でアカマムシが出ました。毛虫、オオスズメバチは園庭外から飛んできます。(慈光こども園さん)
A:マムシやハブ、オオスズメバチはハザード(駆除すべき危険)と考えるべきだと思います。園の周辺環境の整備も必要です。地域一体となって、こどもの遊びの環境づくりがこれからは必要だと思います。

Q:「こどもまんなかってひとだけじゃなくていのち全体をとらえて 考えていくことだよね」大豆生田先生のお話に深くふかーく頷きました。私は、この考え方をもって保育幼児教育に携わる指導者養成や実践者に関われる立場(職種)にあるので、どうしたらそのことを伝えられるのか または伝えるという一方性のある形ではなく共に考える形で これから考えていきたいところです。三重県から視察させていただける距離感(地域環境が近いという観点)で とてもよい実践をされている施設さんがあればご紹介いただきたいです。(才賀美奈さん)
A:全国で自然を取り入れた保育・教育は広がっています。ご紹介もしますので、ご相談ください。