コラム

なぜドイツは「自然を育てる国」になったのか~ドイツに学ぶ「環境を通した保育」~

― 自然を育てることは、子どもの未来を育てること。

6月、ASOBIOスタッフと全国の園の先生方、日本生態系協会さんとともに、ドイツを訪れ、ベルリンやドレスデンを中心に保育施設や森の幼稚園、ランドスケープデザイン、クラインガルテンなどを視察しました。

今回の旅で強く感じたのは、「ドイツの保育が素晴らしい」ということではありません。

なぜ、このような保育や環境が生まれたのか。

その背景にある歴史や文化、人々の暮らし方にこそ、多くの学びがありました。

ドイツの保育施設の様子

自然は「遊ぶ場所」ではなく、「共に生きる存在」

どの園にも共通していたのは、自然を特別なものとして扱っていないことでした。

木がある。

草がある。

虫がいる。

鳥が来る。

そのすべてが日常の延長線上にあり、子どもたちは自然の中で生活していました。

一方で、日本のように葉っぱや花を自由に採取して遊ぶ姿はほとんど見られませんでした。

生きている植物は採らない。

虫も必要以上に捕まえない。

観察するために育てた生き物は、成長したら自然へ返す。

「自然を使う」のではなく、「自然と共に生きる」。

そんな価値観が保育の中に静かに息づいていました。

ドイツの森の中で過ごす子ども達の風景

印象に残った先生の言葉

視察中、忘れられない言葉がいくつもありました。

ある先生は園内を案内しながら、こう話しました。

「また来てください。次に来たら、また環境が変わっていますよ。」

環境は完成するものではなく、子どもたちの姿に合わせて育ち続けるもの。

そんな考え方が当たり前になっていました。

ドイツの保育室内の様子

また、日本で一般的なグラウンド型園庭の写真を見せた時には、

「ここで何をするんですか?」と逆に質問されました。

遊具があるかではなく、何ができる環境なのか。

その問いは、とても本質的でした。

さらに、子ども同士がけんかをしている場面では、

「彼はいつもそうなんだ。でも大丈夫。」

先生はすぐに仲裁へ入ることなく、子どもを信じて見守っていました。

子どもを管理するのではなく、一人の人格として尊重する。

そのまなざしは、どの園でも一貫して感じられました。

ドイツの保育施設の砂場の様子

ドイツは、一度森を失った国だった

実はドイツは、もともと豊かな森の国ではありませんでした。

戦争や産業発展、高度経済成長の中で、多くの森林が失われた歴史があります。

だからこそ約80年という時間をかけて、森を再生し、人と自然の関係をもう一度築き直してきました。

クラインガルテンや都市緑化、昆虫保護の取り組み、森の幼稚園。

それらは突然生まれたものではなく、長い年月をかけて育まれてきた文化です。

「自然があるから保育が変わる」のではなく、

自然を大切にしてきた歴史が、保育にも表れている。

そんなことを実感しました。

ドイツの自然

環境を通して、子どもは育つ

今回訪れた園は、保育のスタイルも規模もさまざまでした。

モンテッソーリ教育。

森の幼稚園。

大規模園。

公立園。

しかし共通していたことがあります。

それは、

環境が、子どもの学びをつくっていること。

自然があることで、

虫に出会う。

鳥の声に気付く。

木陰で休む。

水の流れを眺める。

季節の変化を感じる。

そこから興味が生まれ、遊びが始まり、学びへとつながっていく。

先生が教える前に、環境が子どもへ語りかけていました。

ドイツの小道の風景

自然とともに暮らす文化

ドイツには「自然を大切にしましょう」という言葉以上に、自然とともに暮らす文化がありました。

今回訪れた園では、園庭の多くが樹木や草花に囲まれ、子どもたちは四季の変化を日常の中で感じながら過ごしていました。一方で、必要以上に自然へ手を加えることはありません。落ち葉や枝は遊びに活用しますが、生きた植物や昆虫はできるだけ採取せず、「自然と共に生きる距離感」が大切にされていました。

ドイツの自然木を使った遊具の写真

印象的だったのは遊具です。日本でよく見られるカラフルな既製遊具ではなく、曲がった丸太や自然木を活かした木製遊具が数多く設置されていました。決まった遊び方を与えるのではなく、「どう登ろう」「どう渡ろう」と子ども自身が考えながら遊べる環境が当たり前のようにありました。

ドイツの自然木を使った遊具の写真
ドイツの自然木を使った遊具の写真

実は、ASOBIOのオリジナル遊具「マガリクネッタ」は、まさにこのドイツの自然木遊具から着想を得て誕生しました。自然の曲がりや不規則な形は、子どもの身体の使い方や挑戦する気持ちを自然に引き出してくれます。完成された遊具ではなく、遊びが育っていく遊具(マガリクネッタ)を目指した理由もそこにあります。

ASOBIOの遊具マガリクネッタで遊ぶ子どもたち

今回の視察を通して改めて感じたのは、ドイツの環境教育の本質は「自然を増やすこと」ではないということです。

自然を身近に感じ、触れ、考え、自分で選びながら暮らしていく。その環境を、保育者や地域、大人たちが少しずつ育て続けてきた結果が、今のドイツの風景なのだと感じました。

日本でも、今から始められる

もちろん、日本とドイツでは歴史も文化も違います。

同じものをそのまま持ち込むことはできません。

しかし、一つだけ確信したことがあります。

自然との関係は、時間をかけて育つものだということです。

だからこそ、

今始めなければ、20年後も変わりません。

一本の木を植えること。

草花が育つ場所を残すこと。

虫や鳥が訪れる環境をつくること。

屋内からも自然を感じられる空間を整えること。

小さな積み重ねが、子どもたちの原風景を変えていきます。


ASOBIOが目指すもの

ASOBIOは、園庭を「遊具を置く場所」とは考えていません。

先生方と対話しながら、その園らしい環境を一緒につくり、子どもたちが自ら育つきっかけを増やしていく。

そんな「環境を通した保育」を支える存在でありたいと考えています。

ドイツで見た景色を、そのまま日本へ持ち帰ることはできません。

けれど、日本の風土や文化に合った新しい環境は、必ずつくることができます。

未来の子どもたちの原風景を育てるために。

ASOBIOはこれからも、自然と保育をつなぐ環境づくりに挑戦していきます。



【ASOBIOオリジナル遊具 マガリクネッタ】 現在のラインナップは6種類ですが、今後も子どもたちの遊びの様子を見ながら増やしていく予定です。世界に一つだけの形を使ったオーダー製作も承りますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。