園庭整備を終えて

thanka幼稚園のだほくぶ

園長 伊藤 伸之

thanka幼稚園のだほくぶ ではこの度、豊かな森の中で集団生活に向き合える環境を目指し、ASOBIOさんの協力を得て新しい園庭をオープンしました。今回の改修は単なる環境整備ではなく、「子どもたちにどんな育ちの場を用意したいか」を園全体で改めて見つめ直す取り組みでもありました。

新しい園庭の大きなコンセプトは「森がやってくる」でした。AIなどによって時代の変化が訪れるこのタイミングで、“命のいとなみ”を感じることができる経験が必要だと考えています。木々や草花、虫や鳥、水や土。思い通りにならない自然と出会いながら、感じ、考え、試し、また関わっていく。そんな時間が、子どもたちの大切なところを育んでくれると感じ、今回の園庭づくりを決めました。

完成したものを、ただ子どもたちに与えるのではなく、自然ならではの可塑性を大切にしながら、“子どもたちや先生たち自身で完成させていく空間”を目指しています。

そのため、計画段階で最も大切にしたのが「未完成の完成」ということと、「先生たちとともにつくる」というプロセスでした。

設計の初期段階で、職員同士で付箋を使ったワークショップを行い、「期待できる遊び」「もっと欲しいもの」「疑問・不安」というテーマで意見を出し合いました。

「泥まみれになる場所と綺麗な水場を分けて、それぞれで遊びこめるようにしたい」

「登れる木が欲しい」「デッキでボーっとできる居場所がほしい」

と夢が膨らむ一方で、「衝突リスク」「死角の増加」「高いところからの落下」「排水問題」など、リアルな不安も多く挙げられました。私たちはこれらの声をそのままASOBIOさんにぶつけ、動線のゾーニングやメンテナンス計画、地中の排水工法に至るまで、一つひとつ丁寧に協議を重ねて設計に反映してもらいました。

園庭を子どもたちに開放する直前のプロセスとして、職員間で「新・園庭 虎の巻」という独自の安全・運用マニュアルを作成しました。

このマニュアルの根底にあるのは、単に危険を禁止するのではなく、子どもが「自分で考える力」を育てるという願いです。

例えば、植栽直後の木を守るために「次の夏までは木がまだ赤ちゃんなの。赤ちゃんの上に乗ったらどうなっちゃうかな。」と子どもたちに理由を考えてもらうような声かけの工夫です。

その他、約200種類増えた植物の中からアセビやナンテンといった有毒な植物の配置図や看護師と協力して、緊急対応のフローも整備しています。

開放直前には、この「虎の巻」を手に、担任から非常勤の先生まで一緒に園庭を歩きました。「どこにどんな植物が植わっていて、どう対応すべきか」を現地で確認し合い、必要に応じて防護ネットの設置場所の検討なども行いました。その後、担任の先生から子どもたちへも1クラスずつ時間をとり、新しい園庭でのワクワクと気をつけることを丁寧に伝えた上で、ついに園庭のオレンジネットを取り外して開放を迎えました。

はじめての春を迎えて、園庭に緑があることの心地よさ、美しさを感じています。

キイチゴでイクラご飯をつくることも、ジューンベリーをひたすら収穫する楽しさも、それを食べにくるイソヒヨドリの鳴き声に耳をすませることも、木に生えている謎のブニブニを何度もツンツンして不思議がることも、カマキリやくもの大量の孵化をみて気持ち悪いって感じることも、毛虫を大切な命として扱うことも、雨庭がお水をゴクゴク飲み込む謎に出会うことも、この園庭がないと生まれなかったのかもしれません。

築山を駆け上がり、泥場で水を汲み、それぞれがお気に入りの場所を見つけています。これからも、さらに遊びこめる空間を先生たちと一緒につくっていきたいと思っています。

保護者の方の参加シロ(関わりしろ)の企画もしています。

例えば、新設された、いわゆる「すべり台」は保護者の方からも名前を募集し、子どもたちと一緒に決めた「れるれる坂(すべれる、のぼれる)」という名前になりました。「すべり台」という一般的な名称をあえて使わないのも、公園のルールと混同せず、言葉の持つ意味や「お互いに気づき合う心」を大切にしたいからです。

また、これだけ多くの植物を植えていただいたので、とくに根付くまではたっぷりの水やりが必要になります。ここもなかなか大変な作業になるため、「グリーンバトン」というボランティアチームをつくって、ママやパパたちとほぼ毎日水やりを実施しています。最近はひまわりの種植え、植え替えもママたちと行いました!

 

(保護者の方の活動報告コメント:水やりを終わろうとしたところ、ひとりの子が、「まだあるよ!」と、身をかがめて築山のデッキの下に水やり。そこには小さな植物が沢山。クローバー??子どもたちが見ている景色を知ることができて嬉しかったです🤭)

先生たちの思いを出発点に、子どもも保護者も巻き込みながらみんなで考え、話し合い、歩きながら作り上げた部分があるからこそ、園庭には子どもたちの育ちを願う大人たちの愛情がたっぷりと詰まっています。これからも、園に関わるすべての人がワクワクできるように、この庭も一緒につくっていきたいと思います。