2026年7月23日に開催された、ASOBIOセミナー「育ちの環境Lab.2:ドイツに学ぶ園庭と保育環境〜ランドスケープデザインと共主体の実践〜」のセミナーレポートです。セミナー動画の見逃し配信(アーカイブ)を共有します。セミナー内で回答できなかった、ご質問にも回答します。
セミナーの開催概要はこちらです。
アンケートにご回答いただいた皆様に、登壇資料をプレゼントします。視聴後、アンケート回答をお願いします。
Q: 自然豊かな環境では、高低差や凹凸を良さとしているかと思いますが、バリアフリーだったり、インクルーシブ保育と共存していく為の何かアイディアがあれば、おしえてほしいです。
A:自然豊かな環境というと、「凸凹がある」「築山がある」「森がある」というイメージが強いですが、ASOBIOでは自然環境=すべての子どもが同じ遊び方をする場所とは考えていません。むしろ大切なのは、一人ひとりが自分に合った関わり方を選べる環境であることです。例えば築山があれば、
遊び方は一つではありません。インクルーシブ保育の視点でも、「全員が同じことをできる環境」を目指すというより、さまざまな参加の仕方が認められる環境をつくることが重要だと考えています。そのためには、例えば
など、「自然」と「バリアフリー」を対立させるのではなく、選択肢を増やす設計がポイントになります。ASOBIOでも、ドイツの園庭を視察した際、「すべてをフラットにする」のではなく、多様な環境が連続していることが印象的でした。自然環境には難しさもありますが、その難しさを無くすことよりも、誰もが自分らしい関わり方を見つけられる環境をデザインすることが、これからのインクルーシブな園庭づくりにつながるのではないでしょうか。
Q:子どもたちが遊んで枯れてしまった芝や崩れた築山などの環境は今後どうしていく予定でしょうか?自園でも、頑張って準備した芝山が数か月で土の山に戻ってしまいました。
A:とても共感するご質問です。実は、ASOBIOでも「芝が剥がれてしまった」「築山が崩れてしまった」というご相談は本当によくいただきます。まずお伝えしたいのは、子どもたちがたくさん遊んだ結果として芝が傷んだり、築山の形が変わったりすること自体は、決して失敗ではないということです。環境は完成した瞬間がゴールではなく、子どもたちが関わることで変化していくものだと考えています。とはいえ、「何もしない」というわけではありません。例えば、
このように、子どもの使い方を観察しながら環境を再構成していくことを大切にしています。実際にドイツの園庭でも、「完成した園庭」を維持しているというより、毎年少しずつ手を入れながら育てている園が多くありました。また、「芝が剥げた」ということは、その場所に子どもたちが何度も足を運び、夢中になって遊んでいた証でもあります。そのため、「元の姿に戻すこと」だけを目標にするのではなく、なぜそこに遊びが集まったのかを読み取ることも大切です。もしかすると、その場所は芝よりも土遊びに向いているのかもしれませんし、逆に芝を守るためにあえて築山に道を作るなど、動線を少し変えるだけで改善することもあります。環境は一度つくって終わりではなく、子どもたちが先生に教えてくれる使い方をヒントに育て続けるものだと、私たちは考えています。
Q:安全面・衛生面のバランスが難しいと感じることが多いです。例えばビオトープにハクビシンがきてフンをしました。職員はビオトーブに生き物がきてくれたこと、そこからまた新しい生体系が始まる可能性があることにワクワクしたのですが、その理解を保護者や一部の職員にうけいれてもらうことはなかなか難しい。どのように対応していますか。
A:まずは子どもの安全・衛生を最優先に考えてよいと思います。ハクビシンは鳥獣保護管理法の対象となる野生動物でもあり、フンには寄生虫などのリスクもあるため、子どもが触れないようにし、適切な方法で速やかに処理することが大切です。その上で、職員が「ハクビシンが来てくれた!」とワクワクした気持ちは、ぜひ保育につなげると良いのではないでしょうか。例えば、「ハクビシンってどんな動物?」「夜に活動するんだね」「どうして園に来たんだろう?」と子どもたちと一緒に調べたり、生き物同士のつながりや地域の自然について考えたりするきっかけになります。また、その様子をドキュメンテーションで保護者にも共有し、「安全面ではこのような対応をしています」と伝えるとともに、「園ではこんな学びにつながりました」と保育の意図もあわせて発信することで、自然環境への理解も深まっていくと思います。安全への配慮を丁寧に行いながら、自然の中で起きた出来事を子どもたちの学びへとつなげていく。その積み重ねが、自然と共生する力を育むことにつながるとASOBIOでは考えています。
Q:うちにはヤギやブタ、ニワトリがたくさんいます。これから自然に触れ合える環境を作っていきたいと思っています。ただそのリスクについては少し考えてしまいます。生き物へのアプローチはどのようにお考えてすか?
A:ASOBIOでは、生き物との関わりは、子どもたちが命の営みを身近に感じられる、とても貴重な環境だと考えています。一方で、生き物が相手だからこそ、ケガや感染症などのリスクがあることも事実です。そのため、大切なのはリスクをゼロにすることではなく、リスクを理解した上で関わり方をデザインすることだと思っています。例えば、「優しく触れる」「触った後は手を洗う」「動物にも嫌なことがある」といった約束を、子どもたちと一緒に考えながら関わっていくことも保育の一つです。ASOBIOでもお伝えしているように、リスクは学びの機会にもなります。生き物との関わりを通して、命への思いやりや相手を尊重する気持ち、自然の中で生きる知恵を育むことにつながります。もちろん、安全管理は欠かせませんが、「危ないから関わらない」のではなく、どうすれば安全に豊かな体験ができるかを考え続けることが、自然保育やインクルーシブな環境づくりにもつながると考えています。
